2015年3月3日火曜日

アストンマーチン・ラピード と アキュラ・レジェンド

  福野礼一郎氏のレビューをまとめたムック「晴れた日にはクルマに乗ろう・総集編」が先日発売されました。かつて「クルマの神様」という一切広告を載せないクルマ雑誌を企画したこともある福野氏ですが、フェアな言論!という視点ばかりに神経が行き過ぎたせいか、「クルマの神様」はハッキリ言って誌面レイアウトのセンスが悪過ぎでした。クルマ雑誌の写真を見てガッカリしてしまうのはやっぱりマズいです。それなのに日本の自動車雑誌はスクープばかりに重点を置いているものが多く、擬装で全くディテールがハッキリしない写真を特ダネだとドヤ顔で出してくるのでツマラナイなと思っています。

  そんな気分をスッと晴れやかにしてくれるのがこの新しい「福野」ムックです。とっても晴れやかでいい写真が誌面の大部分を覆い尽くしています。そのほとんどのカットに福野さん自らが映り込んでいて、なかなかのナルシストぶりなのですが、例えばミスターGT-Rの水野さんが語ればそのクルマがカッコ良く見えてくるのと同じで、福野さんが乗るものは片っ端からとても良いクルマに見えてくるのでとても不思議です。余談ですが沢村(慎太朗)さんが微妙な表情で一緒に映り込んでいるクルマには少々複雑な感情が芽生えます。フェラーリでも嘲る規格外な変人ライターのオーラでしょうか・・・。オートカー・ジャパンの休刊は残念です。

  簡単に言うと、福野さんが乗る(評する)アストンマーティン・ラピードはこのクルマが持つ個性を存分に発揮して光輝くのですが、沢村さんが乗るラピードは「とらえどころがない」なんていうなかなか当意即妙な表現を、沢村さんの顔面が見事に表現していたりします。私のような乗る機会もまず無いド素人が読んでいると、ラピードというクルマのイメージが180度転換してしまいますね・・・。今回の「福野ムック」の写真を見て改めてこのクルマはどこから見ても隙がないデザインで、内装も2300万円という価格を納得させるだけのコーディネートで、一目見て専用設計部品の利用率が相当に高そうです。

  サイズは長さがおよそ5mで幅1930mmですから、新しく出るホンダのレジェンドに近いようです。完全3BOXのレジェンドに対し、リアがゲート式の新世代ラグジュアリーサルーン設計(パナメーラやテスラモデルS)になっているラピードなので、多少は意味合いが変わってくるかもしれません。純然たるスポーツブランドの「アストンマーティン」とメガ・コンストラクターの中では最もスポーティと言われる「ホンダ」。そして2300万円vs700万円という価格差3倍以上ですから、お互いに意識などしてないかもしれません。ただホンダとしては2代目NSXの発売と重なるわけですから、ホンダ並びにアキュラのブランドイメージを劇的に前進させるためにも、もっと新型レジェンドのデザインで「攻めて」も良かったように思います。ホンダの役員がラピードみたいなデザインのレジェンドに乗れば、日本の自動車メーカーもなかなかクールですね。

  もちろん人それぞれに好みがあるでしょうし、パナメーラやラピードのような「リアハッチ型」のラグジュアリーサルーンに違和感を感じる人もいるでしょう。レジェンド発売と同時に公開された「無限」のレジェンド用パーツをフル装備すれば相当にカッコいいですから、無理にラピードのような凝った造形を追いかける必要はないわけです。しかしホンダが再び輝くためには、メルセデス・BMW・アウディ・レクサス・インフィニティがひしめく「画一的プレミアム」路線ではなく、これらを一気に捲り倒すくらいの圧倒的なイマジネーションによる勝利を目指すべきだったのではないかと思います。新型レジェンドはすでに北米ではアキュラRLXとして発売されていますが、販売状況はとても好調とはいえません。堅調な収支を続けているホンダとしては大ナタを振いにくい状況ではあるのでしょうが・・・。

  アキュラがパナメーラやラピードを意識したようなラグジュアリー&プライベートサルーンを企画すること自体に無理があるという見方もあるでしょう。パナメーラやラピードですら大して売れていなのに、ホンダが未体験のジャンルに首を突っ込んでわざわざ参入するなんていうプランは役員からのゴーサインがどうせ出ないだろう・・・と設計陣は最初から諦めていたのかもしれません。あくまで私の推測に過ぎませんが、そんな消極的な印象がどうしても消せない新型レジェンドは発売2年間でアメリカ市場で輝くことはありませんでした。

  しかし2015年のうちに新型NSXの発売を計画しているホンダですから、トップレベルの性能を備えたスーパースポーツを投入するという意味では、ポルシェやアストンマーティンと肩を並べる存在になります。この新型NSXを成功させるためにも、アキュラのイメージを劇的に変えるような惹きの強いプライベートサルーンを作っておく必要があったのではないかと思います。まあ素人の浅はかな考えに過ぎないわけですが・・・。


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