2014年7月22日火曜日

メルセデスSクラス・クーペ 「トヨタのFCVなんかよりも世界にとって断然に重要なクルマ」

   とてもリアルでは口に出せないけども、いつかは絶対に乗ってやる(笑)!と密かに思っているクルマ、そんな代表格がメルセデスの2ドア・フラッグシップGTカーの「CLクラス」です。全グレードがV8以上で「偽物なし!」という抜群の”本物感”は、1000万円以上払うなら絶対に備えておいて欲しい「美点」ですね。こんなこと言うと怒られちゃいそうですけど、メルセデスもアウディもBMWもエンジン次第で価格がガラッと変わってしまうので、V6や直4が設定されているほとんどのモデルには、もはや「ステータス」なんて全く感じられないです。BMW635iなんてボディは立派ですけど載っているエンジンはハッチバックのM135iと同じですし・・・。

  そんなドイツ御三家の中でも「アウディR8」とメルセデスCL改め「Sクラス・クーペ」だけは、絶対に汚れない高級車の尊厳を保っています。大学を出て働き出したころから「メルセデスCL」だけは全然格が違う!とズブの素人ながらに思っていました。だいぶ後になってから、福野礼一郎というカリスマライターの著書の中にも「CLだけは正直言って羨ましいと思う。」という一節を見つけたときは、自分のセンスにちょっとだけ自惚れたりもしました「オレやっぱわかってる」(バカが・・・)。一度そんな体験をしてテンションが上がっちゃうと、もはや他のメルセデスの良さが見えてこなくなっちゃうから恐ろしいものです。

  そんな「CL」という車名もいよいよ消え、新たに「Sクラスクーペ」として生まれ変わりました。名称が変わったことにどういう意味があるかなんて、まったく興味ないですが、新しいデザインは・・・やっぱりいいですね。レクサスもBMWも同じですが、やはりフラッグシップというだけで何でもカッコ良く見えてしまう"補正"を考慮しても、なかなかのデザインだと思います。特に気に入っている点はサイドの窓がとても小さいことですね。2ドアのメルセデスはピラーレス(窓枠なし)なドアのイメージがありますが、その憧れを裏切らない辺りが伝統の高級ブランドらしいです。

  このクラスのクルマになるとパワートレーンなんて比べようもないし、とりあえず私ごときが乗ったところで全く不満なんてないでしょうから、唯一の懸念材料がデザインになるわけですが、とりあえず写真で見る限りはパーフェクトです。このクルマのデザインを見ていると、現在日本で発売されている3BOX車の何処が気に入らないのかに気づかされます。なぜ現行レガシィB4やレクサスGS、そしてV37スカイラインがダメなのか?それはこのSクラスクーペの隣りに並んだらハッキリすると思いますが、やっぱり繰り返しになりますが、サイドの窓がデカすぎます。これ不思議なことに一度気になるとそこばっかりに目が行ってしまうんですよね・・・。

  一方で、サイドの窓が小さくて良いと思うのがレクサスRCですね。ショートデッキというクーペの特徴を素直にデザインすれば当然ながら小さくはなります。おそらく年内に公開されるであろうスカイラインクーペも小窓になってセダンからイメージ一新するでしょう。4ドアセダンでもちゃんと小窓にこだわってデザインしているブランドも探せばあります。「三大・デザイナーズ・セダン・ブランド」と勝手に命名させてもらってますが、アストンマーティン・マセラティ・マツダの3つです。セダンのデザインを大いに語るに値するのは、この3つだけだと個人的には思っています。

  最近、実車を見かけていいなと思った「E63AMG」の4マティックの走りっぷりに興味があるのですが、この新型「Sクラス・クーペ」もなんと全グレードAWDになるようなので、同じような加速が楽しめると思われます。クルマのキャラクターを考えるとGT-R並みの加速なんて不必要だとは思いますが、メルセデス最大レベルの5027mmの全長ながら全高はCLAよりもさらに低い1411mmですから、これだけワイド&ローの設計ならば、さらにAWDにしてこれまでに無いラグジュアリーカーを作ろうという意欲の現れでしょうか。いったいどれだけ安定感があるのか・・・。

  トヨタやホンダがFCVを間もなく発売しようとするご時世に、車重2トンを500ps、しかも燃費はたったの5km/L程度の2人乗りのクルマを乗り回すなんて、もはや恥ずかしいという意見もよくわかります。しかし先日も連休の関越道・藤岡JCTで上信越道(軽井沢方面)の分岐に優雅に入っていくCLを見かけましたが、(勝手な想像で恐縮ですが)これこそが誰にも否定されないクルマの醍醐味だよな・・・と思います。90%以上が会社名義で買うという「LS」や「Sセダン」で同じことをしても、ただの"節税車"としてしか見られず小馬鹿にされますが、経費に計上できない2ドアのメルセデスフラッグシップで軽井沢の別荘に乗り付けるなんて生活を目指して頑張りたい!と思わせてくれる・・・もの凄く貴重な一台なので間違っても無くならないでほしいと願っています。

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2014年7月7日月曜日

ジャガーFタイプ・クーペ 「"分化型"メーカーの魅力」

  クルマについていろいろ知りたいと思い、あれこれとクルマ本を読んだり、詳しい人に話を聞いたりしていると、しばしば遭遇するのが「R32は凄かった!」みたいな旧型車への惜しみない賛辞です。昔ワルをやっていたオッサンなんかに喋らすと、「湾岸線で250km/hで走っている横を何台もすり抜けてってさ〜」なんて「本当かな?」という話がたくさん飛び出してきてリアクションに困ったりします。そういう時は「スゲっすね!」しか言っちゃダメです。変にツッコミを入れるとおかしな空気になりますから・・・。

  「昔のスポーツカーは"神"だったけど、今のスポーツカーは"クズ"ばっかだ・・・」みたいなことを言われちゃうと、作る側もどんどん臆病になっていきます。「ファンとは変化を望まぬ人々」という金言もありますが、RX8が、NCロードスターが、CR-Zが、86が浴びてきた批判がメーカーのやる気を失わせ、それらのクルマを楽しむユーザーの声を掻き消し、スポーツカーを巡るあらゆるエネルギーを吸い尽くしてしまう疫病神になっている気がしなくもないです。

  もっとも批判はあって然るべきだとは思います。出来ることならば相手に対して「思いやりのある批判」であればいいのですが、まあそんなに都合良く世の中が「理性的」であるなんて幻想でしかないですが。なにせ専門家の間でも「スポーツカーの定義」など千差万別で、中には極端な例ですが「BMWはスポーツカーだけど、スズキはスポーツカーではない」くらいのざっくりとした考えもあるようです。実際には「BMWもスポーツカーではない」と思うのですが。

  そもそも専用設計のスポーツカーってどれくらいあるの?って話です。本体価格1000万円以下で日本で発売されている専用設計車は・・・トヨタ86/スバルBRZ、マツダロードスター、ロータス(エキシージ、エヴォーラ、エリーゼ)、ポルシェ(ボクスター、ケイマン)、ジャガーFタイプに新たに発売されたアルファロメオ・4Cくらいなものです。あとは全てプラットフォームの流用による「改造乗用車」に過ぎません(ケータハムなどマイナーブランドを除く)。ほんの数年前までは他にもトヨタMR-S、ホンダS2000、マツダRX8そしてNSXがあったわけですが・・・。

  日本未発売のものを含めるともっと増えるか?というと、少なくとも日本で知れ渡っているメーカーからはこれに該当するモデルは作られていないと思います。それゆえにトヨタ86などは、世界各地で最大級の賛辞で歓迎されていますし、「こんなリーズナブルな価格で専用設計スポーツカーを作ってしまう"クレイジー"なメーカーはトヨタ(スバル)とマツダだけだ!」といって「日本の自動車産業」への尊敬を集めています。最近じゃ車種が少なくなったこともあり、86やロードスターの世界的な価値が十分に広まったこともあって、雑誌に叩かれることもなくなりましたし、「ロードスターと違ってZ4の直進安定性は凄い!」みたいな訳分かんない記事に出会うこともほとんどなくなりました。Z4は3シリーズのシャシーを切り詰めて使っているのだからそんなことは当たり前ですよね・・・。

  「ロータス」も「ポルシェ」もそしておそらく「アルファ4C」も、その専用設計の強みを十分に認識されて日本のオーナーからも愛されています。ゴルフをベースにした「アウディTT」や、スカイラインをベースにした「フェアレディZ」、インプレッサベースの「WRX」、Cクラスベースの「メルセデスSLK」とは旋回性能が断然に違うというのもありますが、やはり「専用設計」の魅力というのは大きいと思います。

  そしてこれらと同じように「専用設計」スポーツの強みを発揮して、既存のスポーツカブリオレを蹴散らして世界の注目を集めるジャガーFタイプとそのクーペ版も、「よくぞ!作ってくれました!」と歓迎したいです。先行発売されたコンバーティブルよりも断然にお買い得になったクーペはV6スーパーチャージャー(340ps)が823万円!そしてフェラーリやランボルギーニのラインナップにも劣らないハイパワーを誇るV8スーパーチャージャー(495ps)がなんと1029万円!の大バーゲン価格になっています。

  A45AMGの方が360psも出て658万円!だからお買い得といわれればそうかもしれません。どんな安いクルマでも昔にくらべて断然に高性能になった乗用車のシャシーに、ハイパワーのエンジン載せているだけで満足するならばそれがいいでしょう。メルセデスが鍛えぬいたシャシーのポテンシャルを存分に味わうというのも素晴らしい楽しみ方だとは思います。それは「GT-R」や「WRX」や「M3/M4」が日産、スバル、BMWのシャシーの優越性をアピールするものであるのと同じです。

  その一方で「サルーンとスポーツカーは違う」と考えるメーカー、トヨタ、マツダ、ジャガー、アルファロメオ、ポルシェがやっている「極限まで振り切った作り分け」というのも、「クルマの機能性の分化」を踏まえた上で味わうと、サルーンもスポーツカーもさらに「個性的」に感じます。「統合型メーカー」と「分化型メーカー」とどちらが良いかは好みによると思いますが、レクサスやフェラーリのサルーンサイドを担当するマセラティが、メルセデス、BMW、アウディを徐々に圧倒しつつあるのかなという気がします。

  

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↓このシリーズには珍しく技術的な解説がとても濃いです。
  

2014年7月1日火曜日

プジョーRCZ-R 「不遇の時期を越えて、いよいよベストバイなスポーツカーに」

  突然ですが、人間の感性なんてそれほど宛にならないですね。一度は毛嫌いするほどに批判的だったクルマが1、2年経つと「意外といいかも!」と思えてくることが結構あります。マツダファンにもかかわらず発売当初は「セダンにディーゼルってアホでしょ!」と決めてかかっていて、アテンザXDの重くてアクセルもブレーキも怠い意味不明なフィーリングが全く理解できませんでした。しかし1年経って再試乗すると自分のクルマ(GHアテンザ)とは、何から何まで真逆なのにそれはそれで楽しいかも・・・という前向きな印象に変わりました。ただ1年前はマツダの方向性の変化に「頭」が十分についていっていなかったってことなんですが。

  そんなクルマがもう1台あります。「車重1340kg 最高出力270ps・・・価格540万円」趣味のクルマに600万円使う人がどれだけおられるかわかりませんが、これはなかなかじゃないですか? もしある時、何らかのきっかけで「小金持ち」になってクルマ道楽ができるくらいのゆとりを持てたら、コレを買ってもいいかなって思いますね。何を「捕らぬタヌキの皮算用」やってんだとか言われそうですが、そういう事を常に考えている人の方が実現する可能性が高いと言われてますし、考えるだけならタダ!しかもとても楽しいですから日夜あれこれ想像しております。



  この「プジョーRCZ-R」ですが、メルセデスA45AMGとアウディTT-RSがエンジン出力で凌ぎを削っているなかで、慌ててプジョーが出してきたようなクルマです。360psくらいで争っている2台を追いかけるのに、1.6Lターボの270psじゃちょっと寂しいなと・・・プジョーの苦しい台所事情だけが目に付く、やや「貧乏くさい」スポーツカーといった印象でした。A45AMGやTT-RSよりも確実に安い!というのが取り柄というがなんともケチ臭く感じてしまいます。せっかくスポーツカー買うのにケチ臭いと思われるなんて嫌ですし、おとなしくフェアレディZでも買っておいた方がよっぽど幸せかもしれません。ということで発売当初はまったく理解ができませんでした。

  当初は1.6Lターボというスペックにも偏見がありました。やはり気筒当たり400ccだとメカチューニングの幅も限定されて、ターボでひたすら誤魔化すしかなくなるだろうし、しかも絶望的なまでのロングストロークエンジン、しかもホンダやアルファロメオのような極限の高回転を追求できるハイエンドな作りでもない、ただの貧乏くさいダウンサイジングエンジンなので回転数も満足に上げられません。欧州メディアの風当たりも日に日に強まっている「エコじゃない」BMW&PSAの1.6Lエンジンですが、非力なので車重が嵩むX1などのSUVにも使えないことが仇となって、BMWもプジョーも一般モデルへの採用には否定的になっているようで「斜陽」感がハンパないのです。そんなエンジンでも輝けるとしたらどんなクルマか?というと、軽量だけが取り柄ですから単純に軽いクルマということになります。そしてこのBRZ-Rもハイパワーの割に、BMW116iよりも100kg軽いということを考えると、いろいろ手段はあるのでは?という希望的憶測もできます。

  そもそもどんなエンジンを持ってきても、スポーツカーが「完全なる機動性」という理想を追求する限りはどうしても不満が出てきてしまうもので、スズキの軽エンジンを載せているケータハム・セブン160のように、軽量化を強引に押し進めることが「ベスト・ソリューション」と言えるかもしれません(まあエンジンなんて何でもいい)。RCZ-Rが達成した1340kgと270psというバランスはポルシェのボクスター/ケイマンに比肩します。「ホットハッチ」が本分であるプジョーがポルシェに張り合うのだから「挑戦」だか「下剋上」と言うべきでしょうが、堂々たるスタイリングは流石の一言で、特にリアデザインの艶やかさは、後から出て来た現行ポルシェ911の「991」にも大きな影響を与えたようです。

  フェイスリフトが一度あったとはいえ、デザインが風化しないのも素晴らしいです。もともとも設計はアウディTTのコンセプトをパクったのは間違いないでしょうが、TTをさらに超えていくほどのインパクトが過剰気味であったデザインがだんだんと見慣れてきて、いまではいい雰囲気に収まっている気がします。発売当初の印象はフロントマスクが派手過ぎて全く響きませんでしたし、どう考えても「リトラクタブル・ハードトップ」か「ミッドシップ」を連想するデザインなのに、ただの「FFクーペ」だとという「なんちゃって感」が満載なエクステリアも好きになれませんでした。

  内装も当初はベーズ車のプジョー308とほとんど同じでがっかり・・・なんて言われていました。しかしここ数年ではフィアット500やBMWミニが競うようにインパネデザインを改良するのを見て、プジョーも慌てて208のインパネにイルミネーションを取り入れるなど、内装なんて低価格車が拘るものに過ぎなくなっています。欧州のトレンドと言ってしまえばそれまでなんですが、スポーツカーの内装をデコるなんてトレンドはとっくに終わりを告げていて、いまでは華飾をやればやるほど、日産ジュークやスズキハスラーといった小型車の定番となっているカラフルなインパネを連想しますから、スポーツカーのイメージを高めるためとはいえ安易な内装デザインは命取りになる時代になっています。
  
  それでもエクステリアにおけるプジョーデザインの先進性とオリジナリティの「輝き」は、ここで挙げた「ささいな」疑念を全て埋め合わせるに十分なほどで、このクルマを選んだオーナーに「間違いではない!」とくれるだけの価値を証明してくれます。このクルマの小さな荷室に三脚を積んで、夜景の撮影に「出撃」するといった贅沢な使い方をしてみたいなと思う次第です。
  

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