2014年5月29日木曜日

BMW M4 「F30系の一つの落とし所」

  BMW4シリーズは昨年の中頃に発表されてまだ1年も経っていないので、クルマのキャラクターもよく解らない部分もあるのですが、1つだけハッキリしていることは、「BMWのスピード感覚は素晴らしい!」ということでしょうか。スピードといっても加速や最高速が抜きん出ているという話ではなくて、矢継ぎ早に派生モデルを増やして「マルチ」なグレード展開に持ち込んでいるBMWの経営のスピード感覚が素晴らしいということです。

  トヨタや日産が数年かかって「コンバーティブル」をやっと出すのに対して、クーペ発売とほぼ同時に「コンバーチブル」が完成し、M社とアルピナ社から高性能版がそれぞれ発売され、そしてすでにグランクーペも完成しているわけですから、BMWファンならずとも、「華やかだな」と何やら惹き付けられる部分はあると思います。何より感心するのが、日本メーカーにはなかなか見られないプラス思考で、ベース車のF30セダンがBMWの最量販車種に相応しい活躍ができていないという(若干の)逆風の中で、ここまで強気にモデルを「乱発」する決断力は間違いなく世界ナンバー1でしょう。ホンダにもこれくらいの思い切りの良さがあれば・・・。

  さて4シリーズですが、ベース車のセダンが走りや内装の水準から「500万円のマークX」というやや不名誉な評価をされたことで、当初からあまり期待値が高くなく、評論家筋のコメントも「BMWを気楽に乗りたいならいいんじゃない!?」くらいのものが多いように感じます。F30セダンは新型の軽量シャシー(L7)採用に加えて、ランフラットタイヤを装備した上で一定以上の乗り心地を追求しようとした結果、サス剛性などBMW本来のアイデンティティに関わる部分に大きく手を入れてしまったため、特に輸入車大好きの評論家からの批判が絶えないですが、いくらBMWとはいえ新しいことにチャレンジすればそれなりに拙さを露呈してしまうのも仕方ないことでしょう。

  F30セダンも年次改良によって、初期の絶望的なまでの「裏切り」はなくなったようですが、それでもコスト削減を大前提としなければいけない最量販車の悲しい運命からは脱却できていないです。もはや「BMWではない!」とまで言わせた安定感の無さは、4シリーズのクーペボディでは全高が低く、重心が下がった結果ある程度は改善されています。しかしロール幅の絶対値が減ったことで、当たり前ですが入力による衝撃はより大きなものになっていて、セダンよりも乗り心地は悪くなっている部分もあります。

  やはり「限界が低い」設計の範囲内では、どう足掻いても納得いくパフォーマンスは出せない・・・という想いが、評論家筋の「見切った」ようなコメントにつながってしまうようですが、こんなクルマを、例えば435iは乗り出しでおよそ800万円ですが、売ってしまうBMWジャパンってのもまたスゴいインポーターですね・・・。そんな4シリーズにも先代の3シリーズクーペから変わって良くなった点もいろいろあります。一番のポイントは、何となく手狭で貧乏臭かった3シリーズクーペと違って、後席の空間にも配慮されたレイアウトです。クラスが変わるほどの拡大というわけではないのですが、「スポーティ」で「一人乗り」のイメージが強かった先代から、「ラグジュアリー」な「デート車」へと大きな転換を果たしています。

  以前なら無理して6シリーズの中古車を選んでいた人の中でも、4シリーズならば「許容範囲」という意見はあるでしょうし、4シリーズ設置の最大の狙いは「ラグジュアリー・クーペ」ユーザーの関心を集めることにあります。しかし6シリーズとは別の簡易的なシャシーを使った4シリーズではコアな「自動車好き」には簡単には訴求できません。おまけにベース車が「BMWらしくない」という烙印が押されてしまっていては、やや絶望的なように思えます。ただし6シリーズにしても車重2トンを誇る巨漢で、そのスタイリングに惚れて盲目的に購入に走る人もいるようですが、「自動車好き」が絶賛するタイプのドライビングカーというわけではないんですよね・・・。

  むしろ「ドライビング」と「ラグジュアリー感」の両方を楽しめる4シリーズのサイズが、シャシーやら設計やらの話を抜きにすると理想的と言えます(もちろん好みの問題ですが、一般論として・・・)。ということでBMWとしては是が非でも4シリーズに世間の注目が集まるようなグレードを設定したい!というのが本音だと思われます。ディーゼルやコンバーチブル、グランクーペなどいろいろと「刺さる」ポイントを投げかけて、数打ちゃ当たる作戦?といった感じでしょうか。

  そんなバラエティ豊かな4シリーズの決定版と言えるグレードがやはり「M4」なんだと思います。たしかに価格は仰天の1000万円越えなんですが、4シリーズ唯一のMTモデルを設置するなど話題を振りまきつつありますが、やはりF30系を悩ませるランフラットタイヤを使わないという選択が「M4」における最大のポイントかもしれません。同様にランフラットを使わないM235iも断然に乗り心地が良いようで、M4も期待ができます。直6ツインターボの新開発ユニットに軽量CFRPルーフの採用など、他にも「刺さる」点はいっぱいあって、いよいよ4シリーズに本命が登場したと言えるかもしれません。
  

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