2013年8月31日土曜日

レクサスISがダサいなら、メルセデスCLAは・・・

  レクサスISもメルセデスCLAも、あくまで「ちょっとオシャレな実用車」なので、雑誌のデザイン評などどうでもいいと頭では解っているのですが・・・。どちらもブランド内の最量販車なのだから、特筆に値するデザインなど望むべくもないです。それでも7月26日発売の自動車各誌を一通り読んでみて、ISとCLAについてまるで同じ執筆者が書いているかのような内容にとても違和感を感じました。クルマ雑誌の使命はどのクルマも均等に売れて販売のバランスがとれるようにプロパガンダ的な記事を注入することなんでしょうねおそらく・・・。

  やや強引に不当な評価を押し付けられているクルマというのは、執筆者・編集者を完全に怒らせてしまうほどに全能感溢れる「極上車」である可能性が高いようです。あまりのレベルの高さに執筆者が理解不能というわけではなく、意識的か無意識かはわかりませんが、そういうクルマを前に欠点の一つでも見つけないとプロ意識が玉砕するのを感じるようです。

  一方で素人目には同じように良さそうなクルマでも、執筆陣にやたらとちやほやされているクルマは、実際には「駄作」である可能性がとても高いです。全自動車の99%以上が乗っても眺めても特筆する点がないクルマでしかないわけですから、そういうクルマの長所を見つけることがプロの証明になるわけです。

  これらのルーティンを経て、結果的に雑誌の編集者達は高い倫理感・使命感を持って世論を操縦し販売台数の極端な乖離を防ぐかのような仕事をすることになるようです。この方程式によるとこの1年の新型車で、「極上車」に当てはまるのはレクサスISのみです。一方で「駄作」に分類されるのがマツダアテンザ、ホンダアコードHV、メルセデスCLAということになるのでしょうか・・・。

  今回レクサスISとメルセデスCLAは全てのメディアが取り上げている最重要車種となっています。価格・基本性能・デザインのどれをとっても「IS>>>>>CLA」であり、比較対象にも成り得ないのですが、各雑誌を読んだだけでは「CLA>IS」と解釈する初心者もたくさん現れそうな勢いです。もちろん専門誌ですから直接比較するような記事はないです。ニューモデルマガジンXのISデザイン評がとても辛辣でした・・・。自称独立デザイン事務所デザイナーという覆面ライターの語る「デザインのトレンド」とやらがなかなか見えてきません。ISの「煩雑なディティール」って・・・。モダンデザインは「レスイズモア」だからVWやアウディが至高って・・・。パサート借りてきて隣りに並べてみればいいじゃん。ドイツデザインが至高とか言ってるの日本人だけじゃ? 「ドイツ=欧州」ってなんて乱暴な定義なんでしょうか。

  私のような素人目にもレクサスISは「フランスセダン」の影響下にあることはデトロイトショーの写真で解ったのですが・・・。アウディA6が欧州セダンの象徴となりドイツでアウディがBMWの販売台数を超えたのは事実ですが、そのインパクトが他のメーカーに影響を与えたかというと確認できるフォロワーはほとんどありません。アウディという「ドイツ」ブランドがその殻を破ってキャッチーなデザインのクルマを作ったことはニュースですし、確かにデザイン競争に火をつけました。しかし多くのフォロワーを生んだのは、ライバルだったプジョーのミドルセダン407です。打倒アウディを掲げたPSA(プジョー)とフォード(マツダ)から生まれたデザインがいまの主流なのは間違いありません。

  プジョー407が目指したデザインを完成させたのが、マツダアテンザ(GH系、2代目)でした。この顔は日本以上に欧州で広く知られることとなり、その後旧フォード系ブランドのジャガーXFやボルボS60のフェイスリフトへとつながります。さらにGM(オペル)が、今ドイツで最も美しいセダンと言われるインシグニアを発売しました。このインシグニアもGH系アテンザのデザインを延長したような見事な先代アテンザ顔になっています。

  日本の今日のセダン復権は燃費の向上だけでなく、2000年代後半からのセダンデザインの革新が次第に浸透した結果だと思います(ダサいならだれも買わないはず)。V36スカイラインとGH系アテンザがそれぞれ独自にフランスのテイストを取り入れて、ドイツ車を軒並み上回るスタイルを手に入れました。当時はミニバン全盛だったので、セダンを選択肢にする人はとても少なかったようですが、日本車のデザインが向上していることが周知されるようになった結果が、今日のセダンが再び売れるようになりました。デトロイトショーのISプロトはこのGHアテンザとV36スカイラインが築きつつあるトレンドを上手く受け継いでいると思うのです。

  確かにこのデザイナー氏が言うようにISにはショルダーラインの高さなど気になる弱点があります。ただこのISを酷評するなら、CLAはいったいどう評価すればいいのでしょうか? CLS以来気になっている驚異的にダサいあのリアデザインをそのまま受け継いでしまっています。ヒュンダイもパクらないほどの酷いリアデザインをそのまま継承するなど、時代錯誤も甚だしいし、いったいこのクルマに乗って何を気取るの?と思わず本音が出てしまいます。


  
  

2013年8月12日月曜日

官能至上主義! 頂上決戦! BMW6・マセラティグラントゥーリズモ・ジャガーXK

  「BMW6・マセラティグラントゥーリズモ・ジャガーXK」 この3台には日本車が逆立ちしても敵わないラグジュアリーカーの「イディア」が備わっているような気がしてならない。動力性能だけなら日産GT-Rやシボレーコルベット、ポルシェ991型911の方が上なのだろうけど、彼女と幸せな時間を過ごすならやはりカッコイイ車の方がいい。同じ理由でランボルギーニ・フェラーリ・アストンマーティンのV12モデルもこの3台から見れば蛇足に過ぎるクルマだ(と思う)。

  やはりクルマは相対的な評価をされるものではなく、むしろ絶対的な評価で「ほしいか?ほしくないか?」こそが唯一の基準なのではないかと思う。0-100km/hのタイムが5秒台ならば十分にスペシャルなクルマだと言える。それが3秒を切ったからといっても大した価値は感じられない。1000万円出してもほしいと思えるクルマは?と訊かれれば、その答えは人それぞれだろう。独断と偏見で日本で乗り回すクルマを選ぶとしたら、今のところこの3台くらいしか見当たらない。

  この3モデルはいずれも現行モデルだが、いずれは廃盤になってしまう。果たしてこの3台に変わるクルマを作ってくれるメーカーはあるのか? とりあえずBMWは後継モデルを作りそうだが、マセラティとジャガーはなかなか気まぐれで、そもそもFMCという発想がないメーカーだ。他のブランドで期待できるのはレクサス・ヒュンダイ・ホールデンの3社だろうか。

  レクサス(もしくはトヨタ)はBMW6の次期モデルを移植してBMWからのOEMを行うことを発表している。トヨタもかつてはソアラなど好デザインのラグジュアリーカーの実績があるが、どうやらレクサスブランドのデザインが迷走している中で自信を無くしているようで、無難に売れそうなBMW製を選択した模様だ。VWとの激しい競争が続く中で、ライバルと同じ方法を採用するのもやむを得ないことだろう。

  ヒュンダイは高級車重視の方針を既に発表している。これまでは日産とメルセデスをベンチマークして高級車を開発してきた経緯があるが、韓国国内ではイマイチ支持されずシェアが低下していると言われている。ヒュンダイの急拡大路線を考えると、今後はV8エンジン搭載のスポーツラグジュアリーへの進出が濃厚だ。VWやトヨタと違って老舗ブランドと協調することなく、独力でブランドを創出しようという高い志を感じるが、一体どんなクルマが完成するのだろうか?

  ホールデンは右ハンドルのラグジュアリー部門で今後台風の目になりそうな、GM系の豪州メーカーだ。すでに欧州でも500psクラスのVXR8というスーパースポーツセダンを同じGM系のボクスホールから発売していて実績もある。このクルマはスペックとしてはSRTチャージャーやシボレーカマロのような米国型V8セダンなのだが、デザインは日本や欧州と親和性が高い。ちょっと雑な話だが、GMグループが総力を挙げてコルベットのようなデザインのボディをホールデンに持ち込めば、割と簡単にラグジュアリーセダンができてしまうだろう。

  この3社以外にも、マセラティの親会社フィアットグループに属するクライスラーのSRTブランドや、GM・クライスラーへの対抗からフォード=マツダ陣営も協調して趣味性の高いクルマを開発してくることも十分に考えられる。アメリカメーカーが本気で参入すれば、日本での発売価格も高騰が避けられるだろう。日本で1000万円を下回る価格帯で、官能的でV8を積んでいて100%趣味の豪華なクルマがしのぎを削るようになる日も近いような気がする。