2013年4月27日土曜日

ベンツCL 「VIPカーとか言わないで・・・」

  最近では500万とか600万といった価格で「普通のクルマ」が平気で売られている。日本車ならばせいぜい200万円程度の性能なのだが、「新型輸入車」というだけで結構な価格になる。ただ輸入車といっても海外メーカーが製造しているというだけでしかなく、伝統のスペックだとか「日本車にはない輝き」なんてものはなく、ドイツメーカーが南アフリカやメキシコの工場で作らせた「普通のクルマ」だ。多くの部品は日本車の真似をして使われているし、環境性能を高めるために「直4エンジンを使って、車体を軽量化」していたりして、その内容はまさに「普通の日本車」だ。

  そんな状況なので、例えばDセグセダンを選ぶとしたら、ドイツ車でも日本車でも大きな差は無いと言える。「レガシィ」だろうが「BMW3」であろうがどちらも満足できるクルマだし、それ以上のことをを期待できるクルマではない。これは「スカイライン」「クラウン」「アテンザ」「Cクラス」「アコード」どれも同じことが言える。1.8LのNAで内装も良くないのに価格だけは一番高いCクラスに文句をいう人もいるかもしれないが、そんなのは些細なことだから気にしなくていい。どのクルマもバランスが良いのでファーストカーとして気に入ったのを1台持っておけばいいと思う。

  世の中にはまfだまだ「バランスの悪い」クルマが存在する。そういうクルマを所有すると、燃費が異常にかかったり、維持費や修理費が青天井だったり、とにかく「メチャクチャ」なのだが、セカンドカーとして一度は所有してみたいと思ったりする。ポルシェ911や日産GT-Rのような「スーパースポーツカー」もいいが、最高のラグジュアリーが表現できる「2ドアFセグクーペ」は最高の贅沢だと思う。Fセグを買うときは間違っても4ドアを買ってはいけない(と思う)。4ドアの高級セダンに乗っていても「どっかの社長が経費で乗ってる」くらいにしか思われないので、例えば別荘地に乗り付けても「頭の悪い経営者」扱いされるのがオチだ・・・。

  メルセデスCLは、「メルセデス」というブランドがBMWやレクサスとは次元が違うものだということを如実に示すクルマだ。レクサスLSやBMW7に2ドアクーペを作っても「まったく」売れないだろう。なぜならこれらは「法人」向けのクルマでしかなく、2ドア車では「経費」にならないからだ。メルセデスCLだけが唯一セダンベースのクルマとして、フェラーリ、アストンマーティン、マセラティと並ぶ「プライベートカー」としての評価を勝ち得ているというのが「現実」だ。つまりSクラスの代わりはLSでいいけど、CLの代わりは日本車には存在しないのだ。

  同じメルセデスに「CLS」という4枚ドアでEクラスベース(つまりクライスラー300と同じ)で1000万とか価格を付けている「ふざけた」クルマがある。このクルマが売れているのは、「経費で落とせる」からだ。よっていくらスタイリッシュだからといっても「経営者」でも「高所得者」でもない人が「個人所有」したら笑い者にしかならないので、間違っても乗らない方がいい(と思う)。「メルセデス」は実に様々な意味合いのクルマが集まった「魑魅魍魎」のブランドだといえる。初心者が手を出すと必ず「痛い目」に遭うので良く検討したほうがいい。

↓「叩きどころ」と「称賛すべきところ」がどちらも満載の「メルセデス」というブランドはやはり魅力十分ということなんでしょうか・・・

  

  

2013年4月24日水曜日

スバル新型WRXコンセプト 「日本に本格的なGTカーブーム到来?」

  最近の日本を初めとした「自動車先進国」のメーカーでは「SUV」の新型車が目立つ。そのほとんどが2007年頃の「SUVブーム」の頃に開発が決定されたもののようで、ブームが去った今となってはかなり「無計画」な開発をしているようにも見える。自動車メーカーにとって困難なことに、2000年代は完全なブームの終焉を迎えた「スポーツカー」の開発がことごとく制限され、その開発資源の多くがSUVへと向けられた。FRスポーツとして開発された「アルテッツァ」や「RX-8」はより高いユーティリティを持つ4ドアセダンへと計画が変更されたりした(もちろんその結果、両車ともにヒットしたが)。しかし極端に制限された「2ドア車」の品薄感が逆に「2ドアスポーツクーペ=高級車」という図式を生み出して人気が再燃している。

  ただ「スポーツカーリバイバル」といっても、日産「GT-R」や三菱「ランエボⅩ」のような「世界最速」クラスのマニア向けスポーツカーが売れるのか?というと、こういうクルマはファンが多いので不況でもそこそこ売れるが、「ブーム」でたくさん売れることもとくには無いらしい。サーキットで走らない人にとって「余計な」装備があまりにも多すぎるだけでなく、非常に燃費も悪くて実用性も低く、エンジンスタート時の騒音もけたたましくて、近所の迷惑にもなりかねない。さらに「ランエボ」に至ってはクルマに詳しくない人から見れば「ただのクルマ」だ。それでもこの2台のクルマは走らせれば「マセラティ」や「アストンマーティン」の軽く1000万円を超えるスポーツカーよりも速いくらいなので欧州でとても人気がある。

  ドイツのニュルブルックリンクでは20ユーロ払えばだれでも自分のクルマを走らせることが出来るそうだが、日本にはそこまでのクルマ文化(スポーツカー文化)が浸透していないせいか、高性能スポーツカーを好んで買う人は少ないようだ。もし日本に「ニュル」のような手軽に走れるサーキットがあったら、圧倒的な加速性能を誇る「GT-R」のようなスーパースポーツカーがほしいと思うのではないだろうか(日産が手軽なサーキットを運営してはどうですか?)。

  そんな中スバルが発表した「WRXコンセプト」は1.6Lターボの240psと従来のWRXからデチューンされているようだ。「STI」に乗っている知り合いは、かなりがっかりしていたようだが、このクルマは従来のスバルのイメージを覆す「エクステリア」になっていて、デチューンによって燃費面でより実用的なクルマになっていることから、カタログモデルとして300万円程度で販売すれば相当に売れるような気がする。三菱がランエボのエンジンをデチューンして発売した「ラリーアート」仕様のギャランフォルティスをカッコ良くしたようなクルマと考えるとかなり食指が動く。けっこうこういうクルマが欲しかったという人は多いと思う(ギャランフォルティスがかっこ良ければな〜)。現実問題としてはラリーアートでも燃費が厳しいので、1.6Lターボというのは魅力的に思う。

  「ハイパワー」こそが高級車の1つの証明であると考えれば、今後こういった実用性を視野にいれていて、なおかつプレミアムブランドに匹敵する「エクステリア」と「インテリア」を持つ高性能モデルが、日本のクルマ好きの人々に「所有する喜びを与えるクルマ」として評価されて大ヒットしていく時代になってきたのかな?と思う。メルセデスあるいはBMWに匹敵するクルマを作れる日本メーカー(トヨタ・日産・ホンダ・マツダ・スバル・三菱)は、ドイツ車を超えてさらに高いレベルを目指すことなしに、これらのメーカーに未来はないという厳しい現実がある。安全で高性能でなければ日本国内で作る意味がないくらいに自動車産業も「空洞化」が迫っている。


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↓この表紙のような「キーンルック」スタイルはどうも所有欲がくすぐられないですね。新型WRXは欲しいなと思いましたが・・・。

  

  
  

2013年4月22日月曜日

ポルシェケイマンS VS ロータスエヴォーラIPS

  2シーターのハードトップスポーツが欲しいなら、マツダが世界に誇る名車「FD」(RX-7FD3S)を買えばいいとずっと思っていましたが、実際に山岳路で「ミッドシップ」の実力をまざまざと見せつけられると、そんな考えもあっさりとすっ飛んでしまいます。やはり軽量のスポーツカーにとって「トラクション」が持つ意味は非常に大きく、斜度がキツければキツいほどに「MR」設計のクルマが圧倒的に有利なようです。FDやフェアレディZ34といった日本のスポーツカーはもちろん疑いようのない実力を持っていますが、「FD」はエンジンは軽量ですがターボを使う必要があり、「Z」は3.7Lのヘヴィーなエンジンをフロントに積んでいます。この2台は比較的安くてパワーもあるけど、やはり2シーターと腹を括っているならば、MRのクルマが欲しくなってしまいます。

  ちょっと「進化が止まっている」日本のスポーツカーを横目に、ポルシェやロータスが絶妙な価格設定の「MR」スポーツカーを徐々にメジャーな路線へと押し上げてきました。絶妙価格といってもベース価格で日産GT-Rと同じくらいの価格なので、いざ買うとなるといろいろ悩みそうではありますが・・・。ただ「GT-R」や「Z」などの日産のスポーツはハイウェイやサーキット向けの印象で、加速と最高速にポイントが置かれているように感じます(GT-Rは911ターボより300km/hで圧倒的に安定)。よってそれとは性質の違う日本の山岳路を走るとなれば、GT-Rよりも断然に軽い「ケイマンS」や「エヴォーラIPS」のほうが楽しい(優れている)ような気がします。

  エヴォーラにはスーパーチャージャー付きの「エヴォーラS」も存在しますが、「エヴォーラIPS」は「ケイマンS」同様にNAエンジンを使って300ps近くの出力していて、しかも3Lオーバーの大排気量エンジンをミッドシップに載せているという日本車にはない設定が最大の魅力です。NAエンジンにこだわるのは、トヨタが「86」に、マツダが「RX-8」にターボを付けないのと同じ考えで、直線の短い山岳ルートにターボはナンセンスということだと思います。「86/BRZ」も「RX-8」もNAの非力さを批判する声もあるようですが、それは暗黙のうちに「4WDターボ」のライバルを想定しているからであって、メーカーの設定した「ジャンル」が違うように感じます(モーター誌が平気で主張するから驚きです)。しかしそんな声はやはり少数派のようで、それ以上に山岳路ドライブユーザーに愛されていて販売も好調に推移しました。もちろん両車ともに日本での販売のボリュームゾーンである300万円を固守していることも素晴らしいと思います。

  このNAの「86」や「RX-8」をさらに進化させるとするならば、ターボを付けてパワーアップするのではなく、NAのままパワーアップさせたいものです。しかし大排気量を積んだ「FR」はフロントへヴィーになるので、全体のバランスを取ると結果的に「フェアレディZ」のような「加速&最高速」路線になってしまいます。「山岳路の専用機」にこだわるならば、大排気量エンジンをミッドシップに載せることで、コンセプトを失わずに「正常に進化」させることができると思います。そしてその「考え」が日本でもかなり受け入れられてきた結果が「エヴォーラIPS」と「ケイマンS」への期待感なのかなという気がします。日本から生まれた「4WDターボ」のスポーツカーとはまた違った楽しさを追求するスポーツカーの「ジャンル」として、マツダとトヨタにはさらなる進化モデルを期待したいと思います。


↓日本語版が復活しました。オールカラーで写真が豊富なのでドイツ語版(かなり安い)でも十分楽しめます。

   

  

  

2013年4月19日金曜日

アルファロメオ159「オシャレすぎるセダンは短命なのか?」

  マツダの新型アテンザは「赤」をイメージカラーにして売り出し、大ヒットになっていますが、よくよく考えたらこのクラスのセダンに「赤」というのはあまりにも大胆な設定だということに後から気づきます。そのせいでしょうか、見かける新型アテンザはことごとく「赤」では無い色の気がします。やはり勢いそのままに「赤」をオーダーする人は少なくて、ちょっと考えて他の色にしている人が多いようです。実際のところアテンザのFMCで「カッコいい」と言っている人はマツダの社長(山内さん)を含め、50歳以上の「オッサン」ばかりのような気がします。意外と若い世代にはウケていないのが新型アテンザなのかなと密かに思っています。50歳を超えたオッサンが「赤」のセダンに夢中というのも、考えものでディーラーで「我に返った」という人も多いことでしょう。

  「赤」のスカイラインなどは中古車で検索すると恐ろしく低価格で購入できます。レクサスISやホンダアコードも同様で、「リセールバリュー」はかなり下がるようです。実際に「赤」のテーマカラーでそのまま売れたDセグセダンは日本車にはないと思います。同様にドイツ車にもありません。その「タブー」を超えていけるブランドは恐らく「アルファロメオ」だけではないでしょうか。

  「アルファロメオの最高傑作」と呼ぶ評論家もいるほどの名車「アルファ159」も中古車にズラッと「赤」が並ぶクルマです。たしかに「赤」がよく似合うフロントマスクで、「艶のない赤」が塗られていて、メタリックが入っていない「赤」でここまで似合うDセグは他にないです。新型「アテンザ」では「赤」以外の色を選ぶ時にあまり積極的になれる色がないように感じますが、この「アルファ159」は「白」も「シルバー」も「黒」も独特の「風合い」があり、結論すると「デザイン」の素晴らしさが突出しているということだと思います。

  あまり「権威主義」的なことは言いたくないのですが、この素晴らしいデザインはやはり超一流のデザイナーを登用した結果のようで、この「アルファ159」はジオルゲット=ジウジアーロの近年の傑作として、工業デザイナーを紹介する本(クルマの本ではない)にも、この「アルファロメオ159」が代表作として写真付きで紹介されてました。

  外装だけでなく、このクルマが素晴らしいのは、FF車としては理想的なサスを配していて、アコードや先代アテンザと同じレベルの足回りを実現しています。さらに内装も非常に「個性的」で所有欲を沸き立たせる「レトロ&ハイセンス」で抜群のデザインをしています。インパネの「華飾」がイヤだという人もいるかもしれませんが、私も割とそういうタイプなのですけどこのデザインは素晴らしいと思います。156や147はかなり売れたようですが、それらと同じブランドとは思えないほどに「159」の内装は突出したものがあります。なんでこれが売れないのか?と率直に疑問に感じたりもするのですが、2009年頃の世界的不況が背景にあって、目に見えて「高コスト」の159は「貢献利益」が出ないほどの販売低迷で、わずかな実売期間でモデル終了になってしまいました。

  アルファロメオは年内もしくは来年には「ジュリア」と呼ばれる後継車種を出すようですが、同じような境遇のマツダ・アテンザと同じく「コスト」を徹底的に見直してくるようで、159の「豪華サスペンション」は期待できそうにありません。さらにブランドのフラッグシップとしてEセグセダン(マセラティ新型「ギブリ」の兄弟車。FR)もラインナップされるようなので、「ジュリア」はセカンドポジションのクルマとして、159よりも「ライト」な設計のクルマになりそうです。中古の159は結構お手頃価格なので、後悔しないためにも「買っておこうかな」という気持ちが絶えず湧いてます・・・。


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↓「新型アテンザ」なんかより「156」「159」がやっぱりいいかもって思ってますね・・・。もちろん「2代目アテンザ」こそが至高ですが・・・。
  

2013年4月17日水曜日

メルセデスCLは意外と乗りやすそうです・・・

  最高の「プライベートラグジュアリー」車と言われる「メルセデスCLクラス」は、日本車では聞いたことがない「Fセグ・クーペ」です。「レクサス」も世界最高のブランドを目指しているなら、このジャンルのクルマ(LSクーペ)も用意するべきだと思うのですが、まだまだ日本の「法人ユーザー」に支えられている台所事情のようで、「対抗車種」が出てくるのはまだまだ先になるようです。

  これだけ「特別」なクルマなので当然に新車価格は「破格」で軽く1000万円を超えてしまうのですが、中古車となると意外とお手軽で、3年落ちで500万円台のものが見られます。5年落ちになると300万円を下回り、先代モデルに至っては50~60万円の「バーゲン」価格です。中古車価格はそれなりにシビアなものがあって、50万円の先代モデルを手に入れても修理代がその数倍はかさむリスクがあります。

  それでも日本車にないジャンルのクルマ、特に「世界のトヨタ」でも安易に作れないくらいのものは非常に「興味深い」し、多少無理してでも所有してみたいと感じます。さらにこの「CL」の魅力を高めているのが、メルセデスのフラッグシップ3車種(S・SL・CL)の中で、変な「社会的イメージ」に煩わされずに乗れることじゃないかと思います。特に「Sクラス」は具体的には申しませんが、さまざまな「イメージ」が付いてまわります。それに対して「SL」は、4シーターオープンという「スペシャル」なボディが強烈で、あまりにもクルマへの強い憧れが前面に出過ぎているのが気になってしまいます(好みの問題もありますが)。

  「CL」は他の2台や「CLS」のような「セレブ」を表現するクルマとは方向性が違っていて、より「自然」に乗れるシンプルさがあると思います。特に現行モデル(2006年〜)はベンツのSクラスと同様のフロントにも関わらず「イカツイ」というより「スマート」な印象があります。「5Lターボ」という大排気量のハイパワーエンジンで燃費も5km/L程度で、「自然」もへったくれもないのですが、それでもデザインの洗練された「シンプルさ」の中に収まってしまえば、「嫌み」のない素晴らしい「クルーズカー」と言ってもいい気がします。

  さらに他のメーカーの「Fセグ」と比べても、一番「乗りやすそう」なクルマな気がします。ジャガーXJ・ベントレーコンチネンタル・ポルシェパナメーラといったクルマもいかにも「高級車」然としていて、「下品」と感じる人もいると思います。BMW7とレクサスLSはややこの中では大人しいクルマなので、「派手な事」が嫌いなお金持ちにかなり愛好されているようです。

  ベンツの大型車のネックが「内装だ」という人もいると思います。運転席から助手席まで、前面180度に渡って広がる「造り込み」のインパネは、ベンツ流の高級車の表現なのでしょうが、ベントレー(コンチネンタル)やジャガー(XJ)の「Fセグ」モデルと比べると、かなり好みが分かれる気がします。ベンツのインパネは、カラーコーディネートやパネルに意匠を加えたりすることはなく、車内のコンセプトは「大衆車」を「そのまま高級化」した「ニュートラル」なデザインです。同じドイツ車のBMWや日産の「シーマ」などの内装に近いです。さすがベンツと日産は盟友だけあって、どうやら趣味も合うようです。ただ「CL」だけは他のメルセデス最上級車種と比べて、「スポーティ」でシンプルなデザインが採用されていて、個人的にはかなり良いイメージです(内装のオプションによっては全く違うものになるようですが・・・)。ぜひ機会があって、ベンツを所有するならば、この「CL」を選びたいと思います。


↓メルセデスはいろいろな意味で「敷居が高い」です。それでも日本車にないクルマを作るメーカーとして、小型車ではなく大型の方でもっと頑張ってほしいと思いますね。

  

2013年4月14日日曜日

新型スカイライン(V37)は新世代セダンを撃てるのか?

  V35以降のスカイラインは北米市場をターゲットにした「新型車」ということもあり、日本での競争力(存在感)はかなり低くなってきているように思います。日本市場も視野に入れていて、車幅を抑えつつ、わざわざ2.5L車を用意してはいますが、マークXやレガシィ、アテンザよりも高額な設定が災いしてか販売台数は低迷中です(モデル末期でもありますが)。

  おそらく購入を考える人々の多くはスカイラインの「価値」を理解してはいるのでしょうが、ライバルと比較しても車重があるので廉価グレードの2.5Lでは「非力」と受け取られてしまう節もあるようです。さらに同価格帯にラグジュアリー感を重視したEセグメントの「フーガ」が設定されていて、さらに同じエンジンでより軽量な「フェアレディZ」も用意されていて、中間に挟まれた格好のスカイラインは相対的に強調するポイントがわかりずらいクルマになっている気がします。やっかいなのがエンジンが3車で共通なので、誰の眼にもフェアレディZがスカイラインより速いことは明らかですし、フーガでも十分に速いので、フーガより居住性の劣るスカイラインの立場は厳しいものがあります。日産も素っ気ないもので、フーガに設定されているHVを投入することもなく、逆によりスポーツ走行寄りのスカイラインを望む人には、「R35GT-R」を買えば?といった対応に感じます。


  それでも今回のFMCでは、さすがにテコ入れを図って来るようですが、ちょっと疑問に思うところもあります。フーガに投入されている3.5L+HVのシステムが使われるようですが、クラウンではすでに廃止された「大排気量のハイブリッド」には販売面では大きく期待できないような気がします(クラウンに3.5L+HVを諦めさせたのは、フーガHVに「加速」と「燃費」で敵わないからという噂もありますが・・・)。ライバルのクラウンやレクサスISのHVに比べて「燃費」が悪く、さらに価格も100万円以上高額の設定になるので、スペックだけを見たらかなり苦戦しそうです。

  それでも「スカイライン」は日本が誇るクオリティカーです。日産がプライドを持ってこのクルマを高性能化させる方向で結論しているのならば、「フォード・マスタング」のような位置づけの日本版マッスルカーとして孤高の地位を築いていくことで、また多くの人に愛されるクルマになるような気がします。新たに採用するHVにしてもトヨタに追従することもなく、なんだか日本車のトレンドに逆行して「我が道を行く」の感があります。しかしそれを堂々と折れることなく続けていくのが、本来の「クオリティカー」の売り方かもしれません。

  そんな「スカイライン」も今年のFMCに続き、来年には新たな種類のパワーユニットとしてメルセデスの2Lターボエンジンを搭載するモデルが登場すると言われています。これまた「半周遅れ」くらいでの「ダウンサイジングターボ」の採用です。BMWなどはすでにディーゼルが日本での販売の主流になっていて、当然ですが2Lターボモデルはその分評価されていないという状況です。そのBMWにおいては「最先端ではない」2Lターボを「期待の新ユニット」として投入してくるということは、スカイラインがそれだけの「看板」を背負ったスペシャルモデルだからだと思います。

  スカイラインほどのクルマならもはやエンジンが何であろうとあまり関係ないのかもしれません(パワーは必須ですが・・・)。もしなにも実績のない新型モデルだったならば、トヨタやBMWの先を行く「低燃費」でお得感が漂う最先端のエンジンにこだわるはずです。北米での圧倒的な実績も背景にはあるでしょうが、ライバルよりも敢えて「悪い燃費」で登場するところに他の日本車にはない強烈な魅力を感じます。あとは全体的なスタイリングをどうまとめて「カッコいい」クルマにしてくるかが評価の分かれ目になると思います。


  ↓スカイラインはエンジンスペックは遅れているかもしれないが、ミドルサイズセダンで楽しくドライブさせるハイテクな「メカチューンユニット」がまた新たに載っかるのだとか・・・
   

2013年4月11日木曜日

「スカイライン」はメインストリームに復帰できるか?

  日産の「商売」において「スカイライン」という商標が今ではどれだけの意味があるのでしょうか? 日本のクルマファンにとって「スカイライン」というブランドは、「技術の日産」がつくる世界最良のスポーツセダンを想像させるものなのですが、その名前を引き継いでいるクルマは、日本市場から静かにフェイドアウトしている印象があります。

  かつてはマークXの前身車の「マークⅡ」と性能や価格で真っ向から対立していた「スカイライン」ですが、今では2.5Lの「マークX」のベースグレードが240万円なのに対し、同じ2.5Lの「スカイライン」のベースグレードは340万円となっていて、この100万円の「格差」の意味が日本市場ではかなり分かりにくいものになっています。結果としてスカイラインは「高すぎて」、マークXは「安すぎて」どちらもいまいち販売が伸びていません。高すぎるといってもBMW3やメルセデスCよりは低価格に設定されているので、スカイラインとしては非常に「微妙」な状況になっています。

  スカイラインは北米では「インフィニティG」として、Dセグの量販セダンでは「最上級」(3万7000U.S.ドルから)のクルマになっていて、価格ではBMW3やメルセデスCよりも「高級」なクルマです(しかも売れています)。この北米市場での「スカイライン」の新たな展開により、内装はV36になって格段に向上しドイツプレミアム勢を完全に抜き去って、レクサスとの「ジャパンプレミアム」同士のハイレベルな戦いを繰り広げています。当然ながら今年のFMCはレクサスISと同じタイミングということもあり、コンセプトカーの段階から「さらに高いレベル」が追求されています。

  かつて「マークⅡ」と争っていた200万円台のミドルサイズセダンが、2.5Lでも日本価格で400万円を超える「超プレミアムDセグ」へと変貌していながら、相変わらず日本では「スカイライン」の名称で発売されるのでしょうか(「インフィニティQ50」という新たなコード名が使われるという噂もあります)。日産もこの「矛盾」にもちろん気づいているでしょうし、ブルーバードの名前が消えたように、スカイラインもGT-Rも近々消えて行く運命かもしれません。「伝統の名称」といわれますが、若い世代の中には、「ブルーバード」「サニー」「スカイライン」といった名前が付いているから購入の候補にならないという意見もあるのは事実です。

  逆に「フーガ」のような新たな名称の車種は、クオリティカーとしてライバルを圧倒する性能を備えているならば、案外すぐに受け入れられて初代からヒットする例もあります。新型のV35も元々は新型車種として開発されたものに、日本仕様のみ「スカイライン」という名称を付けたものでした。V37はV36の基本機構を受け継ぐものですが、ボディの外観はまた新たなものへと進化しているので、日産としては「名称」を変えてさらに幅広い世代に訴求していきたいという思惑もあると思います。逆にいうと「スカイライン」の名称のままで日本市場に新たな風を吹かすには相当ハードルが高いのかな?という気がします。

↓32~34のスカイラインは街中で「異様」なまでの存在感を放っています。ファンにはたまらないでしょうが、絶対に乗りたくないという若い世代もそれ以上にたくさん居るようです・・・

2013年4月7日日曜日

ルーテシア(クリオ)・ルノースポールは日本製エンジンで登場

  ルノーはA・B・Cの各セグメントにスポーツモデル(ルノースポール[RS])を設定していて、どのクルマもエンジン設定が欧州のトレンドと比べて排気量多めだったりするので、結構速いのだろうな・・・とか思っています。1.6Lとか2Lといった小型車は高速道路を多用できるセカンドカーとして、長距離ドライブ派にはなかなか重宝しそうです。さらに近年のルノー車はデザインが格段に良くなっていて、街中に溢れるBMWミニよりも乗っていて気分が良いだろうし、Cセグの「メガーヌ・RS」ならほとんどのクルマを置き去りに出来るほどの爆発的な走行性能のようなので、いろいろなドライビングが楽しめそうです。

  Aセグの「トゥインゴ・ゴルディーニ・RS」は1.6LのNA(136ps)で車重1090kgは、ライバル車?の「アバルト500」と比べるとちょっと分が悪いかも(相手が悪いな)・・。でもトゥインゴの方が安いし、希少です。アバルトの内装(かなり良い)が嫌いな人にはトゥインゴでOKでしょう。結構日本に根付いているアバルトに比べて、現行「トゥインゴ」は左ハンドル&MTのみという、乗り手を選ぶ「我の強さ」に魅力を感じる人もいると思います(アバルトもMTのみですが)。ただAセグは日本ではなかなか馴染みがなく、クルマを良く知らない人には軽自動車に見えてしまう感じですね。トヨタが「IQ」にスーパーチャージャー付けて限定で売ってましたが、カタログモデルで発売するような流れにはなってないです。欧州に参入しているスズキなんかも対抗モデル作ったら面白いと思うのですが・・・。

  今回新たに登場するのがBセグの「クリオ・RS」で、従来は2LのNA(202ps)というなかなか魅力的なスペックで、車重も1210kgなのでかなり速いパッケージになっています。トヨタが欧州ハッチ市場に参入する際に作ったヤマハ製1.8LのNA(190ps)のエンジンを積んだ「カローラランクス・Zエアロ」を彷彿とさせる王道ホットハッチです。今回はエンジンを日産のジューク用の1.6Lに乗せ変え、しかもジュークとは別の三菱製の過給器(ターボ)を付けて200psになって、何十%かは「日本車」になったようで親近感が湧きますね。200psに抑えるところがミソで、これ以上速くすると車体がヨレヨレになってしまうようです(ゴルフGTIなども一緒ですね・・・)。

  「クリオ・RS」はまだ価格が未定だそうですが、300万円くらいでしょうか。「Zエアロ」が200万円ちょっと(1ps=1万円!)だったのを考えると、ちょっと割高ですが中古で80万円くらいの「Zエアロ」よりもデザインが優れていることなどを考えると、興味が湧いてきます。あとはこのクラスのクルマに特有の「運転しづらさ」がどのくらい処理されているかなのですが、5ナンバーの「Zエアロ」より80mmほどトレッドが広く、スポーツチューンのハンドリングも考えると、「Zエアロ」をGTカーとして進化させた(不満をなくした)ような乗り味になっているのでは?と勝手に期待しちゃいます。

  なんでルノー?というくらいに、欧州各社からもライバル車がたくさん出ていますが、なかなか本気で欲しいと思えるクルマはほとんど無かったりします。フィアット500(アバルト)やBMWミニはデザインが「チャラ」過ぎるし、ゴルフやポロのGTIはデザイン的に「Zエアロ」と大差ないし、MB・BMW・アウディは価格の割に楽しめないと思われ・・・。そこいくとルノーは運動性能もデザインもしっかりしていて、一番魅力があると思います。ただフランスのホットハッチ(メガーヌ?)を目指して今年FMCを迎えるマツダ・アクセラを見てから決めても遅くはないですね・・・。


  ↓ルノーと言えばF1最強のワークスエンジン・コンストラクターでしたね・・・
   ミハエル=シューマッハがベネトン=ルノーで・・・

  

  ↓CG(2013年5月号)は、とても面白かったです。この記事もだいぶインスパイアされま   した。ルノーのライバル車種までさりげなく載っていて、このジャンルのことがよく   わかります。先月号のセダン特集(アテンザ表紙)より良かった!

  
  

2013年4月6日土曜日

アテンザの「社会的機能性」その3

  新型アテンザはそのデザインとディーゼルエンジンが大きくもて囃されていますが、このクルマの「説得力」を強めているのは「内装」だと思います。新型アテンザの内装は、先代モデルからほとんど変わっていません。そのインテリアデザインは華々しいエクステリアデザインのイメージを全く壊す事なく「納得」のいくドライブ空間に仕上がっています。マツダは先代のアテンザですでに内装を明確なコンセプトの元に高いレベルで仕上げていて、その完成度の高さはアテンザの隠れた魅力になっています。

  アテンザの内装のコンセプトとは「機能性を重視したシンプルさ」です。あくまで想像ですがインテリアデザイナーは、おそらく「住み心地の良い部屋」とはどんな部屋なのかを考えた結果のデザインという気がします。調度品がたくさん飾られているような部屋ではなく、色の統一が図られていて、必要最小限の空調とオーディオが小さいパネルに収められ、快適な椅子があればそれで十分というスタンスの部屋がモチーフのようです。高級家電がゴテゴテと置いてある部屋のようなトヨタや日産の高級車とも違うし、「高級アンプ」のように気取られたダイヤルで高級感を演出するMBやレクサスとも違う、独自のインテリアになっています。

  このマツダのインテリアは1人もしくはパートナーと一緒に乗っている限りでは最高に快適な空間になります(好みにもよりますが)。決して華やかではなく、「お客人」を後席に乗せて走るには、ちょっと無作法かな?という気すらします。飾り気がないので「応接間」としての空間には不相応だと思います。ただ決して同乗者を不快にさせるような作りではなく、ただひたすらに「落ち着く」空間になっています。仕事のあとに気分転換にドライブするのには最適なクルマだと言えます。後席に人を乗せるならば、トヨタ・日産・MBなどの豪華な装備が付いた方が「格好がつく」のは間違いないでしょう。しかし、V36スカイラインの内装ならまだしも、新型クラウンの内装は一人で乗っているとなんだか落ち着かない気分になりそうです。よりプライベートな時間のためにクルマを使う人にとっては、アテンザの内装に満足できると思います。

  アテンザは後席に身内や気心の知れた人くらいしか乗せられないクルマです。ただ自分を含めて多くの人が滅多なことがない限り、後席に人を乗せることなんてないのではないと思います。好調のスバルのインプレッサの2011年モデルから、内装をマツダに準じたものに大幅な変更をしています。インプレッサの好調の裏にも内装の大幅な質感のアップが理由になっているようです。2007年モデルのインプレッサの内装も、現行に近いインパネの配置になっていますが、どこか締まりがない印象で販売も不調でした。インプレッサ2011年モデルでは、アテンザの2007年モデルを踏襲した仕様になっていて、その似せ方がちょっと驚きです。それくらいにマツダの内装は、ミドルサイズクオリティカーの「新しいスタンダード」になるほどの完成度を誇っています。


↓2007年頃からのアウディの飛躍には、日本人デザイナー和田智さんの手腕によるところが大きかったそうです。たしかにTTだとかA6だとか妙に日本人の感性に馴染むデザインになってます。

2013年4月4日木曜日

アテンザの「社会的機能性」その2

  「なぜアテンザを選ぶか?」その答えは人によってそれぞれでしょう。実際にクラウンではダメでアテンザにしかできないことは意外と多かったりします。例えばクラウンの車内で流す音楽といえば何を想像するでしょうか。これは偏見かもしれませんが、クラウンにはラジオ番組か加山雄三くらいしか思いつきません。別にどんな音楽をかけるのも自由ですが、レディ・ガガやGReeeeNが流れていると可笑しく感じます。アテンザなら宇多田ヒカルだろうがMUSEだろうがなんでもO.K.です。ピンクのクラウンならレディ・ガガっぽいですが・・・。

  簡単に言うと、アテンザの方がクラウンよりずっと「自由」なクルマです。最近ちょっと有名になってきましたが、それでも誰が乗っても様になるし、20歳代前半の人が乗っても決して生意気ということはないと思います。ただ大企業の重役の方が乗るにはちょっとケチ臭いクルマということにはなるでしょうが、それならばクラウンもマークXもBMW3もメルセデスCも同様にケチ臭いです。レクサスLS・メルセデスS・BMW7のようなクルマ以外は大雑把に言ってしまえば、ケチ臭いのかなという気がします。じゃあアテンザとクラウンは何が違うのか? 失礼を承知で言うならば、社会的身分など関係なく人生が楽しく、主体的に人生を生きてる人が乗るイメージがアテンザです。社会的なピラミッドであるとか、世間体に「がんじがらめ」にされている人にとっての安易な選択がクラウンです。

  アテンザは初代から海外市場をメインに考えて作られたクルマとして知られています。そのボーダーレスな設計ゆえに、国内専用のクラウンに比べて弱点も多かったりします。それでもワールドワイドに売れるクルマというのは、その地域の実情にちょっと合わないくらいの些細な欠点を軽く跳ね返すくらいの「魅力の塊」を持っています。アテンザは日本でも欧州でも北米でもオセアニアでも売れているという、それこそMBやBMWをも上回る魅力を秘めた「頂点の一台」です。クラウンが日本市場に特化して極めた一台なら、アテンザはMBやBMWのような欠点を持っていても売れる「ブランディング」カーだと言えます。

  クラウンは機能的にアテンザを上回っているかもしれませんが、アテンザが築いてきた海外でも売れるクルマの「核心的」部分では、まったく太刀打ちできません。トヨタがMBやBMWを目指してより低価格で高機能のクルマを作っても追いつくことはできないと思います。現地開発&生産を柱としているトヨタのクルマには「核心」というエゴが決定的に欠如しています。それでも売れるのだからいいという意見もありますが、業績絶好調の2012年トヨタの営業利益は900万台売って約1兆円です。これは200万台しか売れないMBやBMWとほぼ同額です(2011年まではトヨタは5期連続で赤字)。

  ちょっと話がそれましたが、アテンザの独特の存在感はこうした、海外での一流クラスの評価と日本国内でのマイナー評価のギャップが徐々に埋まってきて、日本車ではかつて見た事がないような立ち位置になってきています。作っているマツダの人達がどれだけ確信しているかは分かりませんが、アテンザはマツダが日本で作り海外へ輸出し続けたことで現在の地位に立っていると思います(アメリカでも生産されていましたが)。トヨタがレクサスを作り、日本で組み上げた世界共通のスペックのクルマを海外へ売る事で、アテンザが辿った道をレクサスが進んできていると言えます。マツダ・アテンザはレクサスに「ブランディング」とは何なのかを身を以て教えたクルマなのだから、もっとマツダは自信を持っていいと思います。  (次回に続く⇒その3)

↓新型レクサスISはアテンザの「自由」な空気を必死で追いかけているように思います。

2013年4月3日水曜日

アテンザの「社会的機能性」

  新型クラウンはあちこちのトヨタの店頭に並んでいてよく見かけます。しかし販売好調にも関わらず、近所(東京西部)で走っている新型クラウンはかなり少ない印象があります。販売台数では新型アテンザを圧倒していますが、この辺でよく見るのはアテンザの方が圧倒的に多いです。新型クラウンはなぜ東京では人気がないのでしょうか。

  あくまで個人的な感想ですが、新型クラウンのデザインは都市部ではかなり「鼻に付く」印象があります。新型クラウンは今までのクラウンとは一線を画した、どこか押しつけがましい高級感を感じるのです。先代までのクラウンアスリートはスポーツセダンとしての洗練されたデザインを持っていましたが、新型ではアスリートはロイヤルの豪華版といった趣になっていて、本来のアスリートが持っていた独特の格好良さが消えて、やたらとゴテゴテした印象です。

  ちょっと乱暴ですが、新型クラウンを選ぶということは、隣人のことなど無関心な都会で、道行く他人に「私は会社の重役です」や「私は地方議員です」などと無理矢理教えて廻っているようなものなんじゃないかと思います。もはやそういうクルマは都会の風景に合わなくなっている感があります。このクラウンと対極にあるクルマが「アテンザ」ではなく「プリウス」です。プリウスに乗っている人間はちょっと見ただけでは何者かまったく判断できません。億万長者が乗っていても不思議でないクルマです。プリウスの大ヒットの裏には「世を忍ぶ」多くの人々にとってとても都合がいいクルマだったという理由があったと思います。

  そのプリウスが担ってきた役割を今やアクアが引き継いでいると思います。人気絶頂で中古車もまだまだ高いアクアに今、乗っている人はかなりの確率でお金に余裕がある人だと言えます。そういう時代にクラウンの存在はどこか浮いてしまいます。あくまで推測ですが、東京で走っていない新型クラウンは地方都市で主に売れているのではないかと思います。初期販売の大半がもしかしたら、愛知・静岡・三重の3県に集中しているのかもしれません。とにかく東京では積極的に買う理由があるクルマではないような気がします。

  現在のトヨタのラインナップでは、クラウンとアクアの中間を埋めるモデルの魅力が乏しいように感じます。マークXやカムリHVは価格を考えると、とても良いクルマですが、クラウンを押しのけて行くような商品力はないように思います。またオーリスは端から見てアクアと比べて優位性が分かりづらいものになっています。日本最強の販売力のトヨタのラインナップの「空白」を上手く吸収しているのが、「新型アテンザ」ではないでしょうか。プリウスのようなクラスレスな匿名性とクラウンのような高品質感の両方を備えていて、トヨタの二極化(クラウンかアクアか)する商品力の真ん中を見事に突破して、多くの日本人の心を捉えたクルマになっていると思います。(次回に続く⇒その2)

↓新型アテンザはある意味でプリウスの進化型なのかもしれません。