2013年10月2日水曜日

日産R35GT-R 「今の日本にムダなクルマを作る余裕はない!」

  マクラーレンMP4-12C ポルシェ911ターボ ポルシェ911GT3といった3000万円級のスーパースポーツカーが次々と日本に上陸してきます。600psを発揮する場所となると、サーキットしかないですし、これだけ高性能だと乗り心地が良いわけはなく、全く実用的ではないクルマです。いや、クルマというより競技用車両として括っていいと思います。

  こういうクルマが雑誌にどどんと登場していると、思わず「アホか」とつぶやきたくなります。自分の生活を豊かにしてくれる最高のGTカーを探しているのに、なんでこんなワケの解らないクルマを見せられなきゃいけないのだろう・・・。フェラーリに乗って爆音たてて、周囲の好奇の目にさらされて、ガソリンを垂れ流して走るなんて、完全にDQNがやることだと思うのですが。

  そんな3000万円するDQN車を持ち出して最高級とか言われても、何もコメントできないですね。さらに「やっぱりイタリア車はスゴい」とか真顔で言っているモータージャーナリストの非常識さは呆れるしかないです。イタリア人の1%くらいはフェラーリに乗ってるとでも思っているのでしょうか? 日本の結構有名な評論家が挙ってフェラーリを所有しています。プロとして評論する立場になったら、取りあえずフェラーリくらい所有しておかないと仕事に成らないということでしょうか。

  グダグダと書きましたが、ハッキリさせておきたいのは600psの2シータースポーツなどはもはや「乗用車」ではなく「競技車両」です。また日本車・ドイツ車・イタリア車とまるで国民性が反映されたかのように比較する対象などでは決してないということです。

  2007年に日産が発売したR35GT-Rは、800万円の価格で3000万円クラスのスーパースポーツを性能で圧倒してしまうという、世界をひっくり返すような衝撃でした。フェラーリが手組みでつくるエンジンや車体を、スカイラインの生産ラインに載せて作ってしまうという思いきった手法で生産コストを低減しました。

  GT-Rは日産が世界に放った強烈なメッセージではないかと思います。「どんな手組みのスーパースポーツを日本に持ってきても、絶対に日産の技術には勝てない。それくらいに世界と日産には歴然たる差が存在する!」といったところでしょうか。しかもGT-Rは決して「競技車両」ではなくて、最高のドライブを演出できる究極のGTカーとして設計されています。

  生活とは無縁の「競技車両」を作って悦に入るなんて、かつてのパトロンが付いて絵画を書いた芸術家みたいなものです。一方で、「乗用車」はユーザーの利便性向上の要求に最大限に応えるために開発されます。日産はあくまで「乗用車」のメーカーであり、社会をより良くしようとして作られる「乗用車」の尊厳を守るためにも、欧州の芸術家の「気まぐれ」に強烈な鉄槌を喰わす必要があると感じたのではないでしょうか。フェラーリやランボルギーニなんて所詮は「オモチャ」に過ぎないのですが、そんなものが最高のクルマと評されている現状を許せなかったのかもしれません。

  日本は世界の最先端を行く「超高齢社会」です。もはや日本で「競技車両」を所有して楽しむという趣味は、乗馬用のサラブレッドを所有するような類いのものです。3000万や5000万といった価格になれば、プロレーサーでもなければ使い切れない性能のクルマになります。日本の公道でドライブデートするのに、そんなクルマが必要なはずはないですし、まあせいぜい1000万円程度のクルマにしておけば十分に幸せではないかと思います。

  そういう意味でもGT-Rやポルシェ911、レクサスLS、Sクラス、7シリーズといったフラッグシップカーがおよそ1000万円程度で横並びに設定されるのも自然なことなのかもしれません。そういった理性的な潮流を作り出したという意味で、4座で世界最高クラスの性能を誇るGT-Rを日産が開発したのはとても価値があることだと思います。

 

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