2013年6月1日土曜日

メルセデスSLKとBMW Z4 「スポーティカーだから許される4気筒&FRということか・・・」

  現代のクルマは十分なエンジンの高性能化の恩恵を受けて、どんな設計であれ大抵のクルマならリミッターに当てることも簡単に出来てしまいます。特別に高性能なクルマを欲しないならば、クルマ選びの最大のポイントは「デザイン」でOKではないかと思います。よくプロの自動車評論家の中には「カッコだけ」と揶揄する人もいたりしますが、全員が本気モードのスポーツカーを選ばなければいけないということはないはずです。よって「デザイン」さえ良ければ、クルマはそれでOKで、評価される(ヒットする)ようになってきています。日本メーカーは最近になってやっとこのことがわかって来たようです。

  「デザイン」を徹底的に重視して作られたクルマの例として、真っ先に思い浮かぶのが「メルセデスSLK」「BMW Z4」「アウディTT」のドイツプレミアム御三家の小型スポーティモデルです。それぞれにユーザーを魅了する豊かな造形美を湛えていて、このジャンルに関しては日本車の追従車(フォロワー)が現行では見当たらないほどです。ひと昔まえにトヨタが出していた、最終型「セリカ」はこの系譜に連なるクルマと言えるかもしれませんが、もはやデザインの精緻さでだいぶ差があるように感じてしまいます。デザインだけならフェアレディZ(Z34)がドイツの3台に対抗できる優美さを持っていますが、日産の開発者に言わせれば、Zをその3台と同じジャンルには括らないでほしいというのが本音のようです。つまりZは「デザイン」だけのクルマではないという事です。

  トヨタが昨年に大ヒットさせた「86」もまた、開発を担当したスバルの人たちに言わせると、ドイツの「その」3台とはいっしょにしてほしくないと思っているのではないでしょうか。よくトヨタ「86」の批判の中に「SLK」「Z4」「TT」にデザインで負けているというものがあります。実際にデザインでは86の方が分が悪いでしょう。さらにスポーツカーとしての性能についても言及して「86」を貶める意見もあったりするのですが、その点に関してはスバルの開発者に言わせれば、ドイツ車の3台は純粋なスポーツカーとして誕生したわけではなく、一般乗用車の車台を流用して作られたものにすぎないもので、「86」や「マツダロードスター」のような専用設計のスポーツカーとは本質的に異なる「乗り物」に過ぎないから下手に比べないでくれといったところでしょうか。

  「SLK」「Z4」「TT」の3台は日本でもちゃんとラインナップされていて、そこそこ人気はあるようです。しかし日本車のフォロワーが生まれないのは、この3台がトヨタや日産の哲学に「反した」クルマだからでは?と思っています。一般論として日本メーカーよりもドイツメーカーの方がクルマ作りにポリシーがあると考えられているようですが、小型スポーツカーに関して言えば現実はむしろその逆と言えます。日本メーカーの開発者達は世界トップ水準の優秀さを誇っていますが、彼らが本当に素晴らしいと感じるのは、設計するクルマが非常に高い「純度」(ポリシー)を持っていることです。日本車の持つポリシーは他の自動車生産国では見られなかったりしますし、トータルで見て、日本車より高いポリシーを掲げる国はまずないです。

  トヨタや日産の開発陣にとって、おそらく「SLK」のベース車の「ベンツCクラス」や「Z4」のベース車の「BMW3シリーズ」は、彼らなら絶対にやらないような設計になっています。「4気筒エンジンにFRのセダン」という設計は、現代の自動車工学の常識ではありえない設計だと言えます。もちろんどちらのクルマにも6~8気筒を積んだグレードもあるので一概に「ひどい設計」とは言えませんが、軽量な4気筒に積み替えたモデルが販売のほとんどを占める状態になっていて、MBとBMWのポリシーが問われています。いずれどちらもFF化してくるのでしょう。日産やトヨタにしても2.5LのV6というガラパゴスなエンジンを使ってユーザーを欺いている気もしますが・・・。

  次期スカイラインも4気筒化が噂されていますが、これに対して日産の開発陣が大反発していると言われています。日産の開発者には絶対に譲れないものが当然にあるでしょうし、現行のV型スカイラインの原点の設計を手がけた水野和敏さん(GT-Rも開発した)が最近になって日産を突然に退社するという事態もあり、どうやらスカイライン開発の現場ではかなりの刷新が行われたようだ。日産が日本メーカーのポリシーを捨てて「ドイツ化」しようがしまいがどちらでも良いのですが、日産経営陣の眼に映っているのは、「デザイン」だけ雰囲気を出して、中身は4気筒ターボに載せ変えた「SLK」や「Z4」に群がる日本人ユーザーなのだと思います。


↓カーグラフィックにはぜひ、ドイツ車の「4気筒FR」とトヨタ&日産の「2.5LのV6」についての告発をしてほしいと思います。

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