2013年6月9日日曜日

プジョー508 「プジョーデザインは世界を制することができるか?」

  世界の有名ブランドメーカーの中で最も優れたデザインを生み出しているのはどこか? クルマの価格にも大きく差があり単純に比較はできないので、簡単に1番はどこかなんて決めることはできないが、確実に上位に来るメーカーはある程度は見当がつく。20年前ならばホンダで、10年前ならアウディだったような気がするが、今はいったいどこなのか?特に「優美」なデザインが際立っているのは、間違いなくマセラティだろう。5年ほど前から台頭が著しく、現代の「スペシャリティカー」デザインの先端に位置している。ライバルの超高級車の中でも抜群のプロポーションをしていてとても目を引く。しかし1000万円超のクルマばかりを展開するメーカーなので、これが1番と言われたら「大衆ブランド」に出番はない。

  他のブランド(大衆ブランド)ではフランスの「プジョー」が、上から下のグレードまで良いデザインのクルマを揃えているように思う。新型車208はBセグということで注目度はそれほど高くないが、このクラスでは珍しいほどにデザインの作り込みの良さを感じる。Cセグの308は2007年デビューを感じさせないほどの完成度を誇っていて、他の追従(BMW1やメルセデスA)を許さないハッチバックの頂点のデザインだと言える(特にリアの造形はCセグ車では孤高の地位にある)。スポーツカーの「RCZ」も強烈な個性を発していて「スペシャリティカー」としての存在感はあるが・・・。それでも308と共通の足回りを使うのはいかがなものか(オーリスに86のボディを被せたようなものだ・・・)? 

  そしてプジョーが誇るDセグセダンが「508」で、こちらも強力なライバルを押しのけての鮮やかなシルエットが印象的だ。BMW6シリーズグランクーペをDセグに落とし込んだと言うとやや語弊があるかもしれないが、サイドのキャラクターラインはややシンプルながら、リアの造形はまさに「スペシャル」で、全体的に豊かな曲線美に360°覆われている。現在大流行中のサイドにプレスラインを思いつくままに入れて、「エッジ感」を競い合っている日独メーカー車とは一線を画しているのも特徴で、むしろそのおかげで個性が引き立っていて、Dセグではとても「華」のあるデザインだ。

  ただせっかくの好デザインなのだが、クルマ自体のスペックはなかなか特筆すべきことが見当たらないのがやや残念だ。1.6Lターボの1グレード設定で1500kg超の車重を考えると、もうちょっとバリエーションのあるパワーユニットを用意してもいい気がする。ただ設計自体は後から登場している新型セダンに影響を与えている点もある。FF車としては2815mmで最大級のホイールベースを持っていて、後席の居住性はFFの全長5m超サイズのクルマ並みに優れている。登場の時点でトヨタカムリや日産ティアナよりホイールベースが50mm程度長く設計されているから、どれだけ「ゆとり」があるか分かると思う。このプジョー508のサイズにかねてから注目していたであろうマツダは、新型アテンザのセダンでは2830mmになり先代と比べて100mm以上も伸ばして来た。

  プジョー508が導入し、新型アテンザが追従した新しい設計は「FF専業メーカー」が仕掛ける「セダン革命」の尖兵と言うべき「革新性」に富んだものになっている。FFセダンの有利さを生かした上での更なる「戦略的設計」は、従来のFRセダンにとってかなりの脅威になっている。

  508とアテンザの2台はDセグとEセグの中間点の「クラスレスな魅力」を掲げていて、メルセデスEクラスやBMW5、レクサスGSといったクラスのFRセダンと同等以上の居住性を持っている。ミドルセダンの「ホットゾーン」が現在どこにあるのか、まだ定かではないがこの2台のFFセダンは居住性だけでなく、デザイン面においてもプレミアムセダンを相手に優位に立っていて、勢力図を徐々に塗り替えつつある。その印象は「狭くてダサい」DセグFRセダンや、「中小企業の社長車」のEセグFRセダンのどちらにも無い輝きを放っているように見える。今後プジョーとマツダがどこまでマセラティに迫る魅力を発揮できるのか? この3社が現状では「デザインTOP3」なのは間違いない。


   ↓508のコンセプトを上手くコピーし、時流に乗りつつある「マツダ6」
  

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